緊急事態宣言解除となりましたが、しばらくはワクチンなども未だ無い事もありニューノーマルなる生活となるのでしょう。
そんな事態が待っているとは思っていなかった2月に、東博の法隆寺館で新発見の染織品が静かに展示されました。

法隆寺の宝物が今更…と事情に疎い私は驚きを持って見に行きましたが、見て更に驚きました。
「こんな織物が(この世に)あったのね!」という程のもので、古代の織物に経験豊富な方に写真を見せても驚かれていました。日本にもたらされた渡り布の奥深さを改めて感じました。

外国製と考えられる飛鳥・奈良時代の染織品の多くは中国のもので、出版物で紹介されています。日本で制作されたものも、明らかに外国の影響があると思われるものも多数あります。

その様な中、これはどこにも属さないタイプだと感じました。同時に展示された毛氈はいくつか存在していますが、これは全く見たことがありません。元々敷物として織られたと思われるずっしりしたタイプで(触っていないのでわからないものの)、説明文によると法隆寺の財産目録に釈迦如来の為の袈裟が二領とあり、その特徴が記されています。担当者はその文様(双鳥円紋)と素材(木綿)から中央アジアからインドを推定していました。

私はそう思いません。薄暗いガラスケース越しの観察ではありましたが、織物はタクテの様でした。
中央アジアで同時期に織られた絹の織物に類似する文様は無く、円紋に双鳥がいるデザインはかなり広範囲の国々で織られたユニバーサルデザインである事、木綿糸が右撚り(s)である事など総合的に考えて、東博の推論には無理があると思います。
デザインと技術、全てマッチするのは私が知る限りにおいてはエジプトです。但し、この時代のエジプトでは木綿より自国で産出する亜麻糸を使う事が一般的です。木綿糸は輸入品で撚りは左(Z)になるはずです。そこで???となります。しかも、そんなに遠くからシルクロードを経て日本にまで来たのだろうか。

私は時に古代の麻と木綿の見分けに苦労します。私だけでなく、海外の美術館、博物館に収蔵の古代の織物に麻か木綿と表記してあるのをよく目にします。お仲間か、と少し親近感を持ったりもするのですが、はっきりして欲しくもあります。
日本の研究者はその様な事は無いとは思いますが、人間ですから間違えもあるかも、などと思ったりもして。。。

これからこの貴重な織物について何かわかってくる事を期待したいと思います。